これまでの視点を変えてみる── 「生命論パラダイム」

2014年 6月 11日
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2014年6月、FIFAワールドカップ開催。
『テクニックはあるが「サッカー」が下手な日本人』という以前読んだ書籍で紹介されていた考え方が新鮮だったので、

「日本はなぜ世界で勝てないのか」×「物事の捉え方」×「デザイン・創造性で大切なこと」に焦点を当てて、新しい視点で物事を捉える方法を探っていきたいと思います。

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生命論パラダイム_目録

 

導入 ── どうやって物事を捉えている?

まずはこちらをご覧ください↓

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2014年春 docomoのプロモーション × OneDirectionです。

あなたはまず、どうやってこの情報を認識しますか。

 

「なんかの外人グループ?」

「お、1Dじゃん!」

「3年で人生は変わる… う、うむ・・・」

「ドコモ。学割。(ケータイのカケラもないけど・・・)」……etc.

 

受け取り方はそれぞれですが、共通していることは『知っている事柄に“分解”して認識しようとする』ことです。

 

因数分解

はじめてサッカーを見る時に、注目する選手を1人でも知っておくことで、何も知らないよりは興味を持って観れますよね。

スポーツや音楽、演劇など、私たちは複雑な事柄を自分の知っている(捉えられる)知識・要素レベルまで一旦分解して理解→解釈、という手順を無意識に行っています。

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▲バラエティ要素が豊かなものから、サッカーに興味を抱きその枠組みを捉えていく

核心へ ── 分解して失われること

本書では、分解して物事・現象を理解しようとする“割り算と足し算”的な発想に対してある例えを出しています。

例えば、魚の“生命”の秘密について調べる際に、魚を解剖し、魚の構成要素(各臓器や骨や血管、筋肉など)の細部を入念に調べたとします。確かに魚の各構成要素は詳細に調べることができたかもしれませんが、“生命”の秘密を知ることができたかというと必ずしもそうではありません。

事実、解剖した魚を丁寧に縫い合わせたとしても分割作業の過程で一度失われてしまった“生命”は決して蘇ってはくれません。

つまり各構成要素間の相互作用を切断した瞬間に“生きたシステム”から“大切な何か(魚の生命)”が失われてしまい、その失われた“大切な何か”は分割の後に再び結合(=足し算)しても蘇ってはくれないのです。  (本書 P143-144 引用 一部略)

新しい視点へ ── スキルはあるけど勝てないワケ

サッカーを例にとると、勝つために必要な要因はこのように分析されます↓

技術, 戦術, 体力, 精神力, 攻撃, 守備, パス, トラップ, ドリブル, シュート, フェイント……などなど。

日本人の個々のテクニックは世界でも高いレベルにあります。しかし、スペイン人指導者から見た日本人のプレーは「テクニックやスピードはあるがサッカーは下手」(P137引用)と評価されます。これはさきほどの魚の例え話のように“割り算・足し算”的な視点で物事を捉えるあまり、切り取ったトレーニングばかり重視して、サッカーにおいての本質(大切な何か)から遠ざかっている、と書かれています。

ここで新しい視点のヒントに気付けます。

物事・現象には 単純簡単に割り切れない “大切な何か” が存在している、ということに。

 

“大切な何か”・・・・・・ってなに?── 複雑で生きたシステム

サッカーで勝つためにはその “大切な何か” を鍛え上げていけばいい

→じゃあ“大切な何か”って何だ……?

と考えてしまいますよね。ただここでまた“大切な何か”を分解していっても先例の“魚の生命”のように再び組み合わせたときには損なわれてしまい堂々巡り。言うなればこれは「生きたシステム」。本書では生きたシステムを捉えるためこのように綴っています。

「“大切な何か”を失わないために、複雑なものを複雑なまま理解する」

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▲映画「CONTACT」壮大な宇宙を表現する1シーン。「言葉では表現できない 詩人を乗せるべきだった」

 

判例をあげて──  歌舞伎の“型”について

“大切な何か”を理解しやすくするため2つの具体例を紹介します。

 

1つ目は歌舞伎の「型」の話。

歌舞伎には「型」という演技や所作の定まったカタチがあります。歌舞伎を演じる上でまず型から入ります。自分の個性を殺して型に生きます。受け継がれた型を模範的に演じていくうちに、やがて役者の個性がにじみ出て、型を破り独自の境地に辿りつく、という話があります。

 

2つ目は同じような話でアニメーターの話。

作画を任せられたアニメーターは自分の絵を主張したいとするんだけど、何度も何度も書き直しをさせられて、その制作会社の枠をはみ出さないようにさせられます。これなら自分の線じゃなくても変わりは他にもいる・・・・・・と思い悩む。けど、個というのはにじみ出るもので、だんだんとその人にしか出せない線、味のある画が描けるようになり欠くことのできない存在になる。というお話。

 

黄金比──  息衝く生命のゆらぎ

「“型”から入る」ということは、その分野で長く培われてきた美意識・様式美に自分という個を飛び込ませ染まってみる、そしてその分野の生きたシステム(大切な何か)を体得した上で自分の持ち味を整えていく、と解釈できます。

これは、優れた芸術作品には黄金比が潜んでいる、というエピソードを連想させます。人は無意識に生命のゆらぎが感じられるものに共鳴し心惹かれ合うのでしょう。

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▲このグググッと盛り上がっていく構成と描写力、ほとばしるほど巧みッ(StellBallRun 第11巻 引用)

理屈づけ──  生命論パラダイム

最後にこれまで紹介したことは学術的に論理つけられています。

前半部分で伝えた“割り算・足し算”的な発想を機械論パラダイムと呼び、

後半部分で伝えた“複雑で生きたシステム”と捉える発想を生命論パラダイムと言います。

 

パラダイムとは、翻訳すると「時代の通念」、

意味は、ある一時代の人々のものの見方・考え方を根本的に規定している概念的枠組み。

 

機械論、生命論という概念自体は紀元前から存在していました。古代~中世、近世までは生命論視点のほうが世間一般の通念で、科学の分野では機械論を用いてました。

近代になり、科学によってこれまで不可解とされてきたメカニズムが確証されるようになり、私たちの通念は機械論が一般的となりました。

 

結び──  そこに意志があること

──*クオリア

自分が見ている「赤」が他人にも同じ「赤」に見えてるかは証明できない、

こういった感覚を共有できないことをクオリアの問題と言われます。

 

──*同調性  良くも悪くも・・・・・・

僕が小学5年生くらいに、ふと気になったことは授業での自主的な発表が極端に減ったことでした。

 

数学の解答や国語の感想など、テストでこういう風に答えれば◯(マル)と学習して、「みんな考えている範疇はある程度同じなんだし誰かが答えればいいでしょ、独自の意見を言ったところで何も評価されないし白い目で見られて損するだけだ」

そんなふうに僕らの“賢さ”は変化していった。

 

剥き出しの自分をさらけ出して傷つかせないように、予防線を張るように、防御策の手立てとして。

 

誰かのフィルターを通して物事を観て、発言をすり合わせ、多くの人と同じ意見に合わせた方が安心感も得られる。無難な選択をしていくうちに、感受性は次第に凝り固まっていく。

 

 

──*誰かと同じだとしても

自分なりに考えたことが結果的に他の人と同じ答えだったとしても、他の人は単色の赤い絵の具でバッと塗り固めた意見かもしれない。

あなたは白や黄や緑や紫など様々な色のブレンドを経て、表現した〝赤〟かもしれない

 

誰かと同じカラーだとしても、自分で導き出すこと、そこに意志があること。

それが小5の自分に対するひとつの回答。(解答でなくて)

 

──*クオリアを取り出す

感じていることを思うように表現できなくても、思考や表現、創作活動を通して、自分のクオリアを取り出してみる。

それがひとつのカタチとなって、何かを通して誰かに伝わっていく──

 

自分のクオリアと向き合うことは、複雑で厄介でまどろっこしい行為だけど、“大切な何か”はそこに潜んでいて、向き合うことで審美眼が育まれ、世界の在り様も精彩豊かに、より高精細になった解像度で、感じとれることだろう。

人によっては、感受性が日常知能の代用をし、そのほうが、頭脳で物事をとらえるより誤りがすくないということがありうる。

感受性が知能の代用をするには、私心の曇があってはならず、つねに高い透明度を保ってなければならない。

司馬遼太郎 「播磨灘物語(二)」181項 引用

写真機はいらないわ 五感を持っておいで

東京事変 「閃光少女」

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【2014 FIFAワールドカップ】

2014年6月12日-7月13日の期間ブラジルで開催されるサッカー世界大会。W杯が始まって以来20回目の大会にあたる。因みに2018年のW杯はロシアで開催予定。

【本書について】

2009年刊行。著者村松尚登氏は1973年生千葉県出身。著者は1996年にスペインへ渡りジュニアユースのコーチとしてサッカーに携わる。本書は12年間に及ぶスペインでの指導生活の経験とノウハウをまとめたもの。2013年7月に出版社を変えて新装版が出ている。
また著者のブログは新しい視点でサッカーを捉えようとする見解が新鮮。

 

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/naoto/

日本はバルサを超えられる

 

【↑こいつについて】

家に転がっていた。Jリーグ初期のキーホルダー。

【1D[ワン・ダイレクション]】

2010年より活動する英国出身のボーイズグループ。ビートルズの再来?とも言われるが、ファンの熱狂ぶりの方が話題になってる気がする。ドコモの宣伝というよりは1Dの知名度を広めることに貢献した結果に。広告としては成功、AKBよりは好感。

【Body Meets Dress, Dress Meets Body】

コム・デ・ギャルソン1997年SSパリコレのテーマ。通称「こぶドレス」といわれ衣服にパッドをつけ、あえて身体のフォルムを变化させている。突飛な形をした外見だが、固定観念とされてきた〝身体〟という制限を飛び越え、人類が何万年も付き合ってきた身体に新しい領域があり、その先があることを知覚させた。それはどちらかというと外見ではなく内面の装いを押し拡げる試みだったといえる。ファッション史に残る作品。

割り算と足し算”的な発想

「◯◯を食べれば痩せる」
「〇〇をすればモテる」
「〇〇をすれば儲かる」
などの発想。

【サッカーが上手くなるための結論】

「サッカーはサッカーをすることで上手くなる」という言葉がスペインではあるそうです。もともと本書はこの結論ありきで、でもこの一言ではあまりに単純で論理的な説得力に欠ける。その言葉に含まれている本質を追い求め掴んできた解釈が綴られています。
自分も中高とサッカーをしていて、暗黙の了解でアレコレなってて、疑問を感じても上手い奴が主導権を握っていて変化がなく単調でした。部活動でサッカーを教えてる人には是非一読してほしい本でもあります。

【歌舞伎の〝〟】

この逸話を挿れたのは爆問学問でこの話題が出て印象深く覚えていたので。放送回は2009年10月「カブキズム!河竹登志夫」を参考にした。→動画リンク

【爆問学問】

NHKで放送されていた番組。正式名称は「爆笑問題のニッポンの教養」不定期回を経て2007~2012年の間オンエアされた。毎回叡智に富んだ見識者を訪ね、枠にはまらず展開される議論はとても楽しかった。 現在は「探検バクモン」が後続番組となっている。

【岡田斗司夫が話してた】

アニメーターの話は岡田斗司夫が話していたのがソース。個性がない、という相談にこの話をしていたとうろ覚え。ネット配信をよく行っている。

【黄金比】

1:1.618の比率。長方形の縦と横との関係など安定した美観を与える比とされる。文献に初めて登場したのは1830年ごろと言われるが古代ギリシア時代から美しいバランスとして用いられてきた。ほかにも白銀比(1:1.414)や青銅比(1:3.303)がある。

【SBR [SteelBallRun]】

ジョジョ第7部として連載されたマンガ。舞台設定は1890年の北米大陸横断レース。このシーンは黄金長方形から描かれる螺旋を回転運動に応用させれば新しいパワーが生み出せる、という場面。
ジョジョ特有のポージングも、作品テーマ「生命賛歌」を反映し、生命のゆらぎを表現ししてあのようなポージングを描いている。
関係ないが自宅に転がっていた第2部キャラのシュトロイハイムと一緒におさめてみた。

【非線形科学】

また生命論を理論的に研究しているのがカオス理論や複雑系などを含む非線形科学です。非線形科学は1970年前後より注目を集め、“大切な何か”が宿る複雑な事象を研究するために様々な分野で応用されています。(本書P144引用)

【クオリア[Qualia]】

日本語では「感覚質」訳される。身体の感覚器が受けとった感覚は、世間一般に通じ合う「言葉」に変換され認識される。クオリアは言葉に変換される前の抽象的でつかみ所のない意識感覚の領域を指している。

【クオリア問題】

科学的にクオリアという存在を確証できるか、という問題提訴。例えばサヴァン症候群を持った人のなかには数字や音に色を感じ取る人がいる(共感覚)。健常者は共感覚を推測することしかできず、彼らがどのような実体験をしているかは同じように知覚することはできない。
クオリア問題というのは、言わずとも文明誕生から自覚していた現象であり、小難しい記述になってしまうが各々が身近に認知していることである。

【ソーシャル・プルーフ[Social Proof]】

自分の意見の妥当性を証明すること。他人に思わず同調してしまう人間の性質。社会的証明。

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