「ニッポンの〝縫製〟スゴ技」
2012.12.09の日曜にMrサンデー(フジテレビ系列)の番組内で「ニッポンの“縫製”スゴ技」という特集が放送されました。
そのなかで福島のリオ・ビアンコさんが取材されてました。以前モデリスト協会の講演でお話されていたので、その講演をまとめてみたいと思います。
15分ほどの動画です。
出演企業 ── 青森:サンライン(ポール・スミス)、山形:佐藤繊維 極細モヘア糸(ニナ・リッチ)、福島:リオ・ビアンコ(鎌倉シャツなど)、フランス:日本人テーラー鈴木健次郎さん
トップレベルのシャツ工場 “リオ・ビアンコ”
リオ・ビアンコは福島県白河市にあるシャツの縫製工場です。
創立は1990年4月。2012年で創業22年になります。
設立当初は社員は60人ほどで、ハミルトンという有名なシャツブランドの子会社として仕事をなさっていたそうです。(IsseyMiyakeなどに携わる)
2001年4月、親会社が廃業になり仕事が来なくなる事態になります。このとき社長の斎藤武夫さんは自ら代表取締役となり有限会社として再スタートをします。「社員を辞めさせず雇用を守りたかった」とそのときの心境を話します。
これまでは主に百貨店のシャツを生産してたが、この変革でセレクトショップ(UA、トゥモローなど)のドレスシャツや鎌倉シャツなどを手掛けるようになります。
リオ・ビアンコのシャツ作り
佐藤社長から大まかな会社の歩みが話され、撮影してきた制作工程を上映しながら各工程の説明をしてくれます。
(※写真はカメラで撮ったスクリーン映像を色調補正して見やすくしてます。あまり見栄えが良くないことをご了承ください)
技術指導─畑田桂子さんの存在
今回、斎藤社長と一緒に技術指導者の畑田さんもお見えなり、ご自身の縫製人生を話してくださりました。
リオ・ビアンコの技術を高め培い伝えてきた畑田さんの歩みもまた、同社(リオ・ビアンコ)の発展に無くてはならない重要なファクターでした。
──畑田さんはリオビアンコに勤める前は三井物産出資100%の東武衣料というシャツ工場で縫製をしていました。
日中は工場で働き、女性ということで綺羅びやかな洋服の憧れから、夜は洋裁学校に3年間通っていました。
(リオビアンコが始まった頃はデザインものが多かったのでパターンの知識が役に立つ)
やがて畑田さんは勤めていた工場を辞めます。そのころ斎藤社長がリオ・ビアンコを立ち上げようとしている時期で働いてくれないかとオファーを受けます。
リオビアンコの初期から現在に至るまで
時代はバブル期で、作れば作っただけ売れる時代でした。
なのでそのころの量産に丸縫いで丁寧に縫うという考えは薄く、「いかに早く、いかに多く」という考え方が普通でした。
ですが今度新しく設立する工場(リオビアンコ)は、丸縫いで丁寧なものづくりをしよう、というコンセプトでした。
畑田さんと社員はスタートの3ヶ月前に仮設工場で丸縫いの練習を行います。
練習期間はすぐに過ぎ本格的に生産がスタートします。
しかし、この頃の社員はいくつかの工場で働いていた人たちの集まりです。
各自がこうすれば綺麗に縫い上がる、という長年培ってきた技術とプライドがあります。
なのでビアンコ式で縫ってもらうのに苦労した、と心境を話します。
一同にまとまらない社員は、バブル期で景気が良かったので福利厚生を潤わせて協力するように仕向け、どうにか生産ラインが軌道に乗るようになってきました。
まもなくに斎藤社長の提案で畑田さんをライン(縫製)から外します。
仮設工場から畑田さんを見てきて指導者の素質があると思っていたのと、自社が技術学校も兼ねていたので技術を育てるようにしていきたいと狙いがあってのことでした。
しかし、畑田さんからすると花形の縫製ラインから外され、当時は泣く泣くの毎日だったと語ります。
指導者として技術を勉強するようになった畑田さんは、当時シャツで日本一と言われていたハミルトンの品質管理チーフのシガワさんとカンバチ先生から本縫仕様のシャツ作りの技術を学んでいきます。
こうして日々の研究と技術の積み重ねでリオ・ビアンコのシャツ作りが出来上がっていきました──
質疑応答
『海外と日本を比較してどう思いますか』
・タイ人はおおらか、日本人は真面目、中国人は稼ぎに来てる意識が強いので、3ヶ月働いたら7~8年やっている日本人を超える
『針と糸は何を使っていますか』
・針は#11,糸は80番手 (シルクなどは針#9,糸90番手です ) 糸はマナードのスパン糸です。フィラメント糸は切れてしまうのでうちはこれでないとダメです。メーカー指定は断ってます。
『何針で縫ってますか』
・メーカーによって異なりますが、21~23sinあたりです。量産だと限界で28sin、オーダーだと32sinもできます。細かく縫っても返し縫いはしないとダメです。
『接着芯はどうしてますか』
・芯は仮接着(ふらし)でやっています。衿/カフスの芯は正バイアスが基本ですが、芯の種類によっては 30°,20°,たて地で行なってます。
『工賃の違いによって品質レベル変えますか』
・どの取引先も同じ人員で同じ手間を掛けて縫っています。
最後に──
日本のものづくりは世界一となっている。技術をなくしたくないし、守りたい。そして私達がこの業界で生き残ってるのは技術のお陰でその恩返しをしたい。
私達は誰にでも技術を見せるし、教える。リオ・ビアンコの工場を残すことが日本の技術を守ることに繋がると思う。
──以上、モデリスト協会の2012年4月に行われた講演会まとめでした。
11月の技術研修も記録しているんですが、こちらは内容が濃くてまとめるのが大変なのでもう少し先になるかな〜
更新ペースが遅くて恐縮ですが今年中に投稿したい記事がいくつかあるので、年末の暇なときに覗いてくれたら幸いです。